多くの日本人が驚くことかもしれませんが、日本の住宅事情はとても特殊です。
多くの国では築年数が経つほどに家の資産価値は高くなります。
特にヨーロッパは家を100年以上持たせるのが一般的なので丁寧にメンテナンスを繰り返し、家族構成が変われば引越しをします。
築年数が経っても資産価値が落ちないので買った時よりも高く転売できるため気軽に住み替えができるのですね。
そのためヨーロッパでは中古住宅がとても盛んに取引されています。
ところが日本では逆に築年数が経てば経つほど家の資産価値は落ちてしまいます。
なぜ日本の住宅はこんなに価値が落ちてしまうのでしょうか?
【地震大国ならではの住宅事情】
日本は世界でもまれに見る災害大国です。
特に地震災害は大きな問題で、これまでに何度も巨大地震に襲われ家屋の倒壊を目の当たりにしてきました。
そのため
「建物は壊れやすいものだ、どうせ作ってもすぐにダメになってしまう」
という概念が日本人のメンタリティとして定着してしまったのではないかとも思えます。
さらに言えば、日本では1950年、1971年、1981年、2000年と耐震基準が年々改訂されてきました。
基準が改訂されるとそれ以前に建てられた住宅は危険だということになり価値を失うため、取り壊されて最新の耐震基準によって家が建て直されるのです。
地震や台風・水害などの災害による家屋の倒壊がある種当たり前ともなっている日本の住宅事情において、古いものをメンテナンスしながら大切に使うという概念はなかなか育ちにくいのかもしれません。
【日本の住宅事情と建設業界】
ところで、アメリカの人口は日本の約2.5倍だそうです。
しかし日本の建設関連の雇用者数はアメリカの2.5倍、人口あたりの建築士の数はアメリカの3.8倍で世界一だそうです。
戸建の新築需要は他国ではあり得ないほどの規模なのです。
人口比に対して新築が多いということは当然ながら解体する家も多くなります。
日本の戸建のうち半数は築38年以内に取り壊されるそうです。
日本のハウスメーカーは耐震性能の高さを盛んに宣伝して住宅を販売します。
安心を売っていると言えば聞こえはいいですが、言い換えれば顧客に地震に対する恐怖を植え付けているようなものです。
国の耐震基準の改訂も要因のひとつではありますが、その結果として本来耐震性能に問題のない住宅ですら危険だと信じ込む人が増えることも、中古住宅の価値が落ちる要因の一つとなっているのではないでしょうか。
【どうせ価値が落ちる家をメンテナンスする意味がない】
これらの理由から、日本では家の手入れをすることに対するインセンティブが発生しにくい環境となっています。
日本の家は新築から20~30年も経てば資産価値がゼロになります。
買い手は土地値と家の築年数の新しさでしか資産価値を判断しないためせっかくメンテナンスしても資産価値が上がらないのです。
そのため日本人は家のメンテナンスにはあまりお金をかけません。
メンテナンスをきちんとしないから、本来ならもっと長期間住み続けられるはずの家でも本当に20~30年で使い物にならなくなってしまうのです。
新築で家を建てる
↓
ちゃんとメンテナンスしない(重要性を感じていない?)
↓
短期間で家が使い物にならなくなる
↓
取り壊す
↓
新築で家を建てる
この悪循環が繰り返されているのが日本の住宅事情なのです。
【住宅にも2極化の波が!】
この悪循環を断つべく(?)最近の住宅では長く大切に住み続けるよう意識改革の動きもあるようです。
国も2009年から「長期優良住宅制度」を施行しています。
また100年持つ住宅をコンセプトとして性能を追求するハウスメーカーも次々と現れています。
それに対して「1000万円で家が建つ!」などローコストを売りにした住宅も出現しています。
こちらは「家はスクラップアンドビルドの使い捨てだ」という割り切り型のタイプということになるでしょうか。
日本の住宅事情が特殊であるのは事実ですが、災害による倒壊という抗えない事情を考慮すると仕方のないことでもあるかもしれません。
限られた資源を無駄にしないため、子孫に資産価値のある家を残すためにも丁寧にメンテナンスを繰り返しながら長く住み続ける。
地震などの災害を見越してローコストに建築してダメになったら気軽に解体し、適宜最新の家に住み換える。
どちらの考えを取るかは人それぞれです。
どちらが正しくてどちらが間違っているとは言えないことだと思います。
今日は日本の住宅はなぜ資産価値が落ちるのかについて考えてみました。
そういう我が家はまだ賃貸で、老後のことを考えるとそろそろ終の棲家を持たないといけないなと少し焦っているところです。
持ち家にするか賃貸にするか、マンションを買うか戸建を買うか、長期優良住宅を建てるかローコスト住宅にするか。
次々と新たな選択肢が出てきてそのたびに迷いそうですが後悔のない選択ができるよう、しっかり勉強して考えたいと思っています。
ではでは~!!